世界のMICE市場で、アジアの存在感がさらに高まっています。

シンガポールでは「MICE Show Asia 2026」が展示スペースを拡大。メキシコで開催された「IBTM Americas 2026」では9,000件を超える商談が設定され、AIとサステナビリティが主要テーマとして取り上げられました。

こうした動きを見ると、MICE業界の競争は単純な「イベント規模」から、「どれだけ価値あるビジネスを生み出せるか」へと明確に変わり始めています。

今週のGlobal MICE Trendsでは、世界で進む3つの変化を紹介します。

① アジアMICE市場が拡大──シンガポールが展示規模を拡張

2026年10月21〜23日、シンガポールのSands Expo & Convention Centreで開催されるMICE Show Asia 2026が、展示スペースを拡大します。

主催者によると、背景にあるのはアジア太平洋地域におけるビジネスイベント需要の拡大です。会場、デスティネーション、MICEサプライヤー、企業の出張担当者、バイヤーなどが集まり、新たなパートナーシップやビジネス機会を生み出す場として開催されます。

特に注目したいのが、バイヤー側が求める価値の変化です。

これまでMICEの開催地選定では、

  • 会場の規模
  • 宿泊施設
  • 空港からのアクセス
  • コスト

などが主要な判断基準でした。もちろん現在もこれらは重要です。しかしMICE Show Asiaが示しているのは、それに加えて、

イベント体験× テクノロジー× サステナビリティ× 柔軟性× ビジネス成果

まで含めて開催地やサプライヤーを評価する動きです。

つまり、単に「イベントを開催できる都市」ではなく、「イベントによって成果を生み出せる都市」が選ばれる時代になりつつあります。日本のMICE都市にとっても重要な変化でしょう。

▲イベント運営はAIが伴走する時代へ

② 「AI」と「サステナビリティ」がMICEの共通言語へ

8月19〜20日にメキシコシティで開催されたIBTM Americas 2026でも、象徴的な変化が見られました。

今年のイベントでは、AIとサステナビリティがMICE業界の進化を左右する重要テーマとして位置付けられました。AIについては、単なる生成AIの紹介ではなく、実際のビジネスモデルや業務、意思決定をどう変えるのかという実践的なテーマが扱われています。

一方、アジアではタイがサステナブルMICEへの取り組みを強化しています。

Thailand Convention & Exhibition Bureau(TCEB)は、

  • カーボンニュートラルイベント
  • フードロス削減
  • サステナブルイベントのガイドライン
  • 認証制度
  • 地域企業への経済波及

などを体系化。環境だけではなく、Economic・Social・Environmentalの3つの視点からMICEの持続可能性を捉えています。

ここには重要なポイントがあります。AIもサステナビリティも、数年前まではイベントの「付加価値」でした。しかし今後は、AIをどう活用するのか。そして、環境・地域社会へどのような価値を残すのか。まで説明できることが、イベントそのものの競争力になっていきそうです。

▲イベント運営はAIが伴走する時代へ

③ MICEは「来場者を集める」から「商談を設計する」へ

今回特に注目したいのが、IBTM Americas 2026の商談数です。今年は4,000人を超える業界関係者が参加し、500人を超える専門バイヤー、400社を超える出展者が集結。

そして会期中には、9,000件を超えるビジネスミーティングが設定されました。この数字は、現在のMICEの方向性を象徴しています。重要なのは、「何人来たか」だけではありません。「誰と誰を会わせたか」です。

例えばBtoBイベントなら、

来場者

興味・ニーズを取得

最適な企業・担当者をマッチング

商談

案件化

成約

というところまで設計することができます。ここにAIが加われば、さらに可能性は広がります。数千人の参加者のプロフィール、業種、役職、興味関心、過去の行動データなどをAIが分析し、「あなたがこのイベントで会うべき5人」を提示することも技術的には十分可能です。

すると、イベントの価値そのものが変わります。「情報を得る場所」から、「自分では出会えなかった相手と出会える場所」になるからです。

▲イベント運営はAIが伴走する時代へ

④ 「マッチング」そのものがイベントのプロダクトになる

ここからさらに一歩進めて考えてみましょう。従来、イベントの中心となるプロダクトは、コンテンツでした。

著名人の講演、セミナー、展示、ステージプログラムなどを用意し、それを目的に参加者を集めるモデルです。しかしBtoBイベントでは今後、コンテンツ+マッチングの両方がイベントの価値になる可能性があります。

例えば参加者がイベントに申し込む際、「新しい取引先を探している」「イベントテック企業と会いたい」「海外展開のパートナーを探している」といった目的を登録します。そこからAIが候補企業を抽出し、双方が希望すればイベント当日の商談を自動設定する。こうなると主催者の役割は、「イベントを運営する会社」から「ビジネス機会をつくる会社」へ変わります。

MICEという言葉の中にある「Meeting」の価値が、テクノロジーによって改めて再定義され始めているとも言えるでしょう。

▲イベント運営はAIが伴走する時代へ

BizMICE Insight

今週の世界の動きを俯瞰すると、一つの大きな変化が見えてきます。それは、MICEが「場所の産業」から「接点を設計する産業」へ進化していることです。

シンガポールはMICE市場への投資を拡大する。タイはサステナビリティをデスティネーションの競争力にする。IBTM Americasでは9,000件以上の商談を生み出す。

そしてAIが、そのマッチングをさらに高度化していく。これまでイベント業界では、会場 × コンテンツ × 運営が重要でした。

これからはそこに、会場 × コンテンツ × 運営 × データ × AI × マッチングという新しいレイヤーが加わってくるのではないでしょうか。

特にBtoBイベントにおいて、「何人集めたか」よりも、「どれだけ価値ある出会いを生み出したか」がイベントの競争力になる時代は、すでに始まっています。

AIが情報を簡単に届けられる時代だからこそ、人がリアルに集まる場所には、オンラインでは得られない「出会い」を設計することが求められる。

それが、これからのMICEの大きな役割になりそうです。

▲イベント運営はAIが伴走する時代へ