イベント業界では、生成AIによる文章作成や議事録作成、チャットボットの導入が急速に広がってきました。しかし、海外のイベントテック市場では、さらに一歩進んだ変化が起きています。

それが「BYOAI(Bring Your Own AI)」です。

直訳すると「自分たちのAIを持ち込む」という意味で、イベントプラットフォーム側が用意したAIだけを利用するのではなく、企業が普段使用しているAIやCRM、顧客管理システムをイベント運営に接続する考え方です。

イベントテックは今、「AIを搭載したツール」から、複数のAIや社内システムをつなぐ“業務基盤”へと進化し始めています。

BYOAIとは何か

これまでのイベントテックでは、各サービスの中にAI機能が組み込まれる形が一般的でした。

例えば、

  • イベントサイト内のAIチャットボット
  • 来場者向けのFAQ回答
  • セッションの自動要約
  • アンケート結果のAI分析
  • 登壇者やコンテンツのレコメンド

といった機能です。

便利である一方、イベントごと、ツールごとにデータが分散しやすく、社内で利用しているCRMや生成AIと連携できないケースもありました。BYOAIでは、企業がすでに使用しているAIや業務システムをイベントプラットフォームへ接続します。

つまり、「イベント専用のAIを新たに覚える」のではなく、日頃使っているAIからイベント情報へアクセスし、必要な業務を実行できるようにする発想です。

海外イベントテックで始まる「AI接続」

2026年7月の海外イベントテック動向では、AIが単独機能ではなく、複数の業務やデータをつなぐ存在になっていることが報告されています。

展示会運営プラットフォームのFFAIRは、主催者が選択したAIや顧客対応ツールを組み込める仕組みを展開。HubSpot、Salesforce、Pipedriveなどの既存システムと接続し、問い合わせ情報を主催者側の環境に残せる設計が注目されています。

また、EventsAirは、開催中・過去のイベントデータと接続したAIアシスタント「Air Intelligence」を展開しています。参加者はイベント情報やコンテンツを自然言語で探し、主催者はイベントデータを会話形式で分析できます。

さらに、イベント領域では、企画、会場調達、承認、予算、参加登録、出張管理などを担当する複数のAIエージェントを連携させる動きも出てきました。

★イベント情報を一元化し、AIと進める運営へ
イベント特化型プロジェクト管理ツール「MICE Joy」

イベントデータが「社内で使える資産」になる

BYOAIの重要なポイントは、単なる業務効率化ではありません。イベントで得られた情報を、社内の営業やマーケティング、人事活動へつなげやすくなることです。

例えば、展示会やカンファレンスでは、次のようなデータが生まれます。

  • 参加登録時の属性情報
  • 閲覧したセッション
  • ブースへの訪問履歴
  • 資料のダウンロード履歴
  • アンケートへの回答
  • 商談や問い合わせの内容
  • イベント後の行動履歴

これらをAIとCRMへ接続できれば、「来場者数が何人だったか」という集計だけでなく、関心度の高い見込み顧客を抽出し、営業担当者へ引き継ぐことも可能になります。

社内イベントであれば、参加状況やアンケート、質問内容を分析し、従業員の関心や組織課題を把握することにも活用できます。

イベントが一日限りの施策ではなく、継続的に活用できるデータの入口へ変わるのです。

★イベント情報を一元化し、AIと進める運営へ
イベント特化型プロジェクト管理ツール「MICE Joy」

国内でも進む「AI接続」──MICE Joy × Web会議ツール

日本でも、イベントテックと外部ツールを連携させ、情報を一元管理する動きが始まっています。イベントに特化したプロジェクト管理ツール「MICE Joy」では、Web会議ツールとの連携を進めています。

イベントプロジェクトでは、主催者、制作会社、会場、運営スタッフなど、多くの関係者が参加します。関係者間で進捗や認識を共有するための定例会議は欠かせず、現在ではZoom、Microsoft Teams、Google Meetなどを利用したオンライン会議も一般的になりました。

MICE Joyでは、Web会議ツールで生成された議事録を自動で取り込み、MICE Joy内の「議事録」タスクへ保存する機能を提供予定です。会議後に議事録を転記したり、別の場所へ保存したりする手間を減らし、イベントに関する情報を一か所に集約できます。

さらに、議事録の内容をAIが分析し、会議で議論された内容や決定事項、更新情報を、MICE Joy内の該当タスクの詳細欄へ自動で振り分ける機能も開発中です。

例えば、会議中に「会場レイアウトは来週までに修正する」「登壇者のプロフィールを金曜日までに回収する」といった話が出た場合、その内容をAIが判別し、関連するタスクへ反映する仕組みです。

これにより、会議で決まった内容が担当者へ伝わらない、議事録を確認しないと最新状況が分からないといった情報の分断を防ぎやすくなります。

MICE Joyでは今後も外部ツールとの連携を拡充し、会議、タスク、資料、進捗など、イベント運営に必要な情報を一元管理できる環境を目指しています。

★イベント情報を一元化し、AIと進める運営へ
イベント特化型プロジェクト管理ツール「MICE Joy」

開催中にコンテンツを完成させるAIも登場

もう一つの注目すべき動きが、イベント開催中のリアルタイムコンテンツ生成です。

これまでは、イベント終了後に録画データを整理し、レポートや記事、SNS投稿、スポンサー向け報告書を作成する必要がありました。

現在は、セッションの内容をリアルタイムに取得し、

  • セッションレポート
  • SNS投稿
  • ホワイトペーパー
  • プレゼンテーション資料
  • スポンサー向け活動報告
  • ダイジェストコンテンツ

などへ変換するAIサービスが登場しています。

例えばSnapsightは、ライブセッションの内容からブランドに合わせたレポートやSNSコンテンツ、プレゼンテーションなどを生成する仕組みを提供しています。

イベントが終わってから発信準備を始めるのではなく、イベント開催中に次のマーケティング施策を動かす時代へ入りつつあります。

★イベント情報を一元化し、AIと進める運営へ
イベント特化型プロジェクト管理ツール「MICE Joy」

イベント主催者が準備すべき3つのこと

こうしたイベントテックを活用するためには、主催者側にも準備が必要です。

★イベント情報を一元化し、AIと進める運営へ
イベント特化型プロジェクト管理ツール「MICE Joy」

1.イベントデータを一か所に集める

参加者情報、タスク、資料、議事録、問い合わせ履歴が別々のツールに保存されていると、AIはイベント全体を把握できません。

まずはイベント情報を集約し、関係者が同じ情報を見られる環境を整えることが重要です。そこで便利なツールがイベントプロジェクトに特化した管理ツール「MICE Joy」の活用です。イベント種類毎に必要なタスクが整理され(タスクの追加削除も可能)、そこで情報を一元管理することがで可能になります。

2.AIに任せる業務と人が判断する業務を分ける

タスクの洗い出し、進捗確認、議事録の整理、FAQ対応、レポートの下書きなどはAIが得意な領域です。

一方で、イベントの目的設定、演出、参加者への配慮、重大な変更の判断などは、引き続き人が担う必要があります。

AIへの全面移行ではなく、役割分担の設計が求められます。

3.データの管理ルールを決める

参加者の個人情報や商談内容を扱うため、どのAIへ、どのデータを渡すのかを明確にしなければなりません。

アクセス権限、保存期間、外部サービスとの連携範囲などを、導入前に確認する必要があります。

★イベント情報を一元化し、AIと進める運営へ
イベント特化型プロジェクト管理ツール「MICE Joy」

編集部の考察──イベントDXの主役は「データの接続」へ

イベントテックの競争軸は、「AI機能があるか」だけではなくなりつつあります。

今後、重要になるのは、

  • イベント情報が一元化されているか
  • 社内のAIやCRMと接続できるか
  • 開催前から開催後までデータを活用できるか
  • AIが提案するだけでなく、実際の業務を進められるか

という視点です。

イベント運営は、会場、出演者、スタッフ、制作会社など、多くの関係者が参加するプロジェクトです。情報が分散した状態でAIだけを導入しても、大きな効果は期待できません。

まずイベント業務をデジタル上で整理し、そのデータへAIを接続する。これが、次のイベントDXの基本形になるでしょう。

イベントテックは「AIを使う段階」から、「AIとデータが連携して運営を動かす段階」へ進み始めています。

★イベント情報を一元化し、AIと進める運営へ
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