イベント概要
イベント名:IT・DX・AI総合展
取材日:2026年4月9日(木)
取材対象:展示会2日目カンファレンス
IT・DX・AI総合展2026の2日目カンファレンスでは、データドリブン経営、BtoBマーケティング、AI検索対策、現場起点のDX、AIワークスペースといったテーマが取り上げられました。扱う領域はそれぞれ異なるものの、通底していたのは、AIやDXを単なる導入テーマではなく、いかに事業成果へ接続するかという視点です。
1日目が「AI活用は導入から業務実装へ」という潮流を示していたとすれば、2日目はその先にある実務論に踏み込んだ1日でした。データ基盤をどう整えるのか、施策をどう商談につなげるのか、検索行動の変化にどう備えるのか、現場で使われるDXをどう成立させるのか。個別最適の延長ではなく、組織として成果を出すための条件が、各講演を通じて具体的に示されていました。
①「ただのDL」で終わらせない。商談を生むホワイトペーパー戦略
― ホワイトペーパーは“資料”ではなく“商談導線”として設計するべきです ―


ベーシックのセッションでは、BtoBマーケティング施策として定着しているホワイトペーパーを、改めて商談創出の観点から捉え直す必要性が語られました。テーマは「ダウンロードされても商談につながらない」という課題です。単に資料の本数を増やすのではなく、誰に、何を、どの順番で届けるかという導線設計まで含めて考えなければ、成果にはつながりにくいという整理は実務的でした。
中でも重要な論点として挙げられていたのが、「一次情報」の価値です。自社の調査結果、支援実績、現場で得た知見など、その企業だからこそ提示できる情報が含まれているかどうかで、コンテンツの説得力は大きく変わります。生成AIでそれらしい資料を整えることはできても、他社でも言える一般論だけでは商談のきっかけにはなりにくい。読者にとって有益であり、かつ作り手の専門性が伝わる情報をどう盛り込むかが、今後さらに重要になると感じさせる内容でした。
あわせて紹介されていたのが、ノウハウと自社紹介のバランスです。講演では、ノウハウ7割・自社紹介3割程度が最も商談化しやすい比率として共有されていました。売り込み色が強すぎれば信頼を損ね、逆にノウハウだけでは“役に立った”で終わってしまう。ホワイトペーパーを有効に機能させるには、内容の有益性と商談への接続の両立が欠かせません。つまり問われているのは、資料を作ることではなく、見込み顧客の検討プロセスの中で資料をどう位置づけるかという設計力だといえます。
②AI時代の検索マーケティングを正しく捉えよ
― AEOはSEOの延長ではなく、購買行動の変化への対応です ―


Speeeのセッションでは、AEOやAI検索対策に関する過熱感を一歩引いて整理し、事業成長との接続という観点からその意味が解説されました。講演で示されていたのは、検索を取り巻く環境の変化です。従来のようにユーザーが複数の検索結果や比較サイトを横断して情報収集するモデルに加え、いまは対話型AIに相談しながら候補を絞る行動が広がり始めています。さらに将来的には、AIエージェントが購買行動そのものを代行する可能性も視野に入っています。
その前提に立つと、AEOは単なるテクニカルSEOの延長ではありません。対話型AIという新たな“情報の入口”に対して、自社がどのように認識され、どの文脈で推薦されるのかを設計する必要があります。講演では、AEOのゴールを「AI経由でのCV獲得」と「AI露出におけるブランディングの向上・防衛」に整理。これらを満たすための論点として、「1. 推奨率・言及率を高めること」と「2. 意図した文脈で正しく言及されること」の重要性を説きました。1は露出の量、2はブランドの質に関わる視点であり、どちらか一方では不十分であるという指摘は非常に実践的でした。
特に印象的だったのは、AIによる誤情報のリスクに言及していた点です。誤った連絡先が提示される、意図しない説明でブランドが語られるといった事例は、すでに無視できないレベルにあります。だからこそ、対策を“やるかどうか”ではなく、どの質問文脈でどう推奨されたいのかを定義し、その状態を作りにいくことが必要になる。AEOは流行語として消費するには重く、むしろマーケティング戦略そのものの再設計を迫るテーマであることが伝わるセッションでした。
③現場起点のDXを促す丸紅の仕組み作り
― DXを定着させるには、現場と開発側が同じ課題を見ている必要があります ―


丸紅のセッションでは、現場起点のDXを促す仕組み作り、事例としてグループ全体での生成AI活用をどう広げているかが紹介されました。その中核にあったのは“全社展開のうまさ”よりも、現場を起点に改善を回し続ける組織の作り方でした。DXは推進部門からの号令だけでは定着しません。現場が抱える具体的な課題に対して、どのように技術を当て、改善し、再び現場へ返していくか。その循環をどう成立させるかが、この講演の主題でした。
同社では、社内に専門組織を置くだけでなく、外部人材も取り込みながら専門子会社を設立し、開発・提供体制の柔軟性を確保している点が特徴的でした。大企業でありながら、制度や組織構造に引きずられず、必要な体制を別途作ることでスピードを担保する。その判断には、DXを“管理するもの”ではなく、“事業を良くするために動かし続けるもの”として捉える姿勢が表れていました。
また、生成AIプラットフォームの提供にとどまらず、現場が自らエージェントを作成し、業務に応じて活用を深めている点も注目されます。いわば市民開発に近い広がりですが、それが成立している背景には、現場の課題感をくみ取り、改善まで伴走する体制があります。DXの成否を分けるのは、導入済みのツール数ではなく、現場がそれを自分たちの仕事に引き寄せて使い続けられるかどうかです。その意味でこの講演は、生成AI活用を組織実装するための条件を具体的に示すものでした。
④次世代AIワークスペース Genspark の真価とは
― AIは“チャットの相手”から“成果物を生み出す作業基盤”へ進化しつつあります ―


Genspark (ジェンスパーク)のセッションでは、AIを単体の支援ツールとしてではなく、業務全体の流れの中に組み込まれたワークスペースの中核として位置付ける考え方が示されました。メール、ファイル、議事録、会話ログなど、企業活動に必要な情報は複数のアプリケーションに分散しています。そうしたデータと、人の意図や判断をつなぎながら、提案書やレポート、ダッシュボードなどの成果物をつくっていく。その間に“インテリジェンスレイヤー”を置くという構想は、AI活用の次のステージをイメージさせるものでした。
ライブデモでは、議事録から提案書を生成する例や、POS・在庫データをもとに経営ダッシュボードを自動で作成する例が紹介されました。いずれも、従来であれば複数人の手作業や確認を要していた業務です。ここで示されていたのは、AIが単に情報を要約するだけでなく、アウトプット作成のプロセス自体に入り込んでいるという変化でした。
さらに講演では、“AI社員”という概念も提示されました。個別タスクを処理するエージェントにとどまらず、利用者の行動履歴や文脈を踏まえて先回りして支援する存在としてAIを位置づける考え方です。もちろん、こうした世界観はまだすべての企業で一般化しているわけではありません。ただ、AIの価値が「質問に答えること」から「成果物を生み出すこと」へ移っているのは確かです。このセッションは、その変化をもっとも分かりやすく示していたと言えるでしょう。
まとめ
2日目のカンファレンスを通じて浮かび上がったのは、AIやDXの議論が、もはや“何ができるか”を語る段階にはないということです。データ基盤を整えること、施策を商談につなげること、検索行動の変化に対応すること、現場で使われる形まで落とし込むこと、成果物生成のプロセスを再設計すること。各講演はテーマこそ異なりましたが、いずれも成果につながる実装には何が必要かを具体的に示していました。
1日目が「導入から業務実装へ」という転換点を示していたとすれば、2日目はその先にある“定着と成果化”のフェーズを掘り下げた1日だったと言えます。技術トレンドの変化は今後も続きますが、最終的に差になるのは、地道な整備を続ける力と、現場で機能するところまで設計しきる力です。2日目のセッション群は、そのことを改めて強く印象づける内容でした。







