イベント本番。

MCが話し終えた瞬間に照明が暗転し、オープニング映像がスタートする。映像が終わると音楽が流れ、登壇者がステージへ。そしてスポットライトが登壇者を照らし、講演が始まる――。こうしたスムーズな進行は、当日のスタッフの「阿吽の呼吸」だけで生まれているわけではありません。

その裏側にあるのが、イベント進行台本です。進行台本には、MCのコメントだけでなく、映像、音響、照明、登壇、転換など、ステージ上で起こるさまざまな動きを時系列で整理します。今回は、企業イベント担当者が知っておきたいイベント進行台本の基本と作り方を解説します。

イベント進行台本とは?

イベント進行台本とは、イベント当日のプログラムを、「いつ・誰が・何をするのか」という視点で時系列に整理した資料です。

例えば、「14:00 開演」だけでは十分ではありません。実際の現場では、

13:59:50 客電を落とす

14:00:00 オープニング映像スタート

14:01:30 映像終了・ステージ照明ON

14:01:35 MC登壇

14:01:40 MC「皆さま、本日は……」

といった複数の動きが連動しています。これらを関係スタッフ全員が共有するための資料が進行台本です。

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「運営マニュアル」と「進行台本」の違い

第10回で紹介した「イベント運営マニュアル」と、進行台本は役割が異なります。

運営マニュアル

イベント全体を運営するための設計図です。

主に、

  • 会場レイアウト
  • スタッフ配置
  • 受付方法
  • 登壇者対応
  • 緊急対応
  • 連絡体制

などをまとめます。

進行台本

イベントのプログラムやステージを進行するための設計図です。

主に、

  • 時刻
  • MCコメント
  • 登壇
  • 映像
  • 音響
  • 照明
  • 転換

などをまとめます。

運営マニュアルが「会場全体を見る資料」なら、進行台本は「ステージの時間軸を見る資料」と考えると分かりやすいでしょう。

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進行台本に必要な7つの基本項目

① 時刻

最も基本となるのが時刻です。例えば、

10:00:00 開演

10:00:10 オープニング映像

10:01:40 MC登壇

というように記載します。大規模なイベントや演出の多いイベントでは、分単位ではなく秒単位で管理することもあります。

② 所要時間

それぞれのプログラムに何分使うのかも記載します。

例えば、

プログラム所要時間
オープニング映像2分
主催者挨拶5分
基調講演30分
パネルディスカッション40分
クロージング5分

所要時間を明確にすると、イベント全体が予定時間内に収まるか確認できます。

③ MC・登壇者

誰がステージにいるのかを明確にします。例えば、

  • MC
  • 主催者代表
  • 講演者
  • パネリスト
  • プレゼンター
  • 受賞者

などです。登壇・降壇のタイミングまで記載しておくと、ステージ袖のスタッフも動きやすくなります。

④ MCコメント

MCが話す内容を記載します。例えば、「皆さま、大変お待たせいたしました。ただいまより○○を開会いたします」といったコメントです。

ただし、すべてを一字一句書く必要があるとは限りません。イベントの性質やMCの経験によって、完全原稿要点だけを記載した進行メモを使い分けることもあります。

⑤ 映像

イベントでは、

  • オープニング映像
  • 会社紹介映像
  • 登壇者紹介映像
  • 商品紹介映像
  • エンディング映像

など、さまざまな映像を使用します。進行台本には、どのタイミングで、どの映像を再生するのかを記載します。映像ファイル名まで記載しておくと、オペレーターのミス防止にもつながります。

⑥ 音響・照明

ステージ演出では音響と照明も重要です。例えば、

BGM FADE OUT

MCマイク ON

ステージ照明 100%

客電 30%

など、必要なオペレーションを記載します。特に演出が多いイベントでは、映像・音響・照明のタイミングを揃える必要があります。

⑦ 備考・注意事項

最後に、各プログラム固有の注意事項を記載します。

例えば、

  • 登壇者はステージ下手から登壇
  • マイクをMCから受け取る
  • 講演終了5分前に残り時間を表示
  • 記念撮影後に退場

などです。細かな情報でも、当日のミスを防ぐ重要な情報になります。

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イベント進行台本の基本フォーマット

実際には、次のような表形式で作成すると分かりやすくなります。

時刻プログラムMC・登壇者映像音響照明備考
13:555分開演前待機画面BGM客電100%開演5分前
14:002分OPOP映像映像音声客電OFF映像スタート
14:023分開会MC開会スライドMCマイクステージONMC登壇
14:055分主催者挨拶代表者氏名表示ピンマイク登壇者照明下手から登壇
14:1030分基調講演講演者講演資料ピンマイク講演照明残り5分表示

このように、時間軸を中心に各スタッフの動きを横方向へ並べるのが基本です。

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「キュー」がイベントを動かす

進行台本を理解するうえで知っておきたい言葉が、「キュー(Cue)」です。キューとは、映像や音響、照明、登壇などを開始するための「合図」です。例えば、

進行ディレクターが、「映像、キュー!」と指示する。

映像オペレーターが映像を再生する。

映像終了に合わせて、「照明、キュー!」

ステージ照明が点灯する。

という形です。つまりイベントのステージ裏では、進行ディレクターが進行台本を見ながら、各スタッフへ次々とキューを出しています。

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良い進行台本は「次に何が起こるか」が分かる

進行台本で重要なのは、情報量の多さではありません。スタッフが見た瞬間に「次に何をすればいいか」が分かることです。

そのため、

  • 時刻を揃える
  • 表形式にする
  • 担当ごとに列を分ける
  • 重要なキューを目立たせる
  • 不要な文章を減らす

といった工夫が必要です。イベント本番中に長い文章を読んでいる時間はありません。「読み物」ではなく、瞬時に判断するためのツールとして作ることがポイントです。

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リハーサルで進行台本を完成させる

進行台本は、PC上で完成するものではありません。本番前のリハーサルで、

  • 登壇者の移動時間
  • 映像の長さ
  • MCコメント
  • マイク受け渡し
  • 照明変更
  • ステージ転換

などを実際に確認します。すると、「登壇に想定より時間がかかる」「映像終了からMC登壇まで間が空く」「マイクの受け渡し位置が悪い」などの課題が見えてきます。

それらを反映して、進行台本を更新します。つまり、進行台本 → リハーサル → 修正 → 本番という流れで完成度を高めていくことが重要です。

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本番直前の「最新版問題」に注意

イベント現場で非常に怖いのが、スタッフごとに違うバージョンの進行台本を持っていることです。例えば、「講演時間が30分から25分に変更された」にもかかわらず、音響スタッフだけ古い台本を見ている。

これだけでも、その後の進行にズレが生じる可能性があります。ファイル名を「進行台本_最新版」「進行台本_最新版2」「進行台本_最終FIX」のように管理していると、どれが本当に最新なのか分からなくなりがちです。

イベント直前ほど、情報を一元管理し、関係者全員が同じ最新版を確認できる状態をつくることが重要です。

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遅れたときの「リカバリーポイント」も決めておく

進行台本は、予定どおり進めるためだけのものではありません。

イベントでは、

  • 登壇者の話が5分延びた
  • セッション開始が遅れた
  • 転換に時間がかかった

といったことが起こります。そこで事前に、「休憩を15分から10分に短縮できる」「転換時間を3分短縮できる」など、時間を取り戻せるポイントを決めておくと安心です。

すべてのプログラムを無理に短縮するのではなく、「どこなら調整できるか」を事前に設計しておくことが重要です。

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編集部より

イベントのステージは、MCだけで動いているわけではありません。映像、音響、照明、登壇者、ステージスタッフなど、多くの人が数秒単位で連携することで、一つのイベント体験がつくられています。

その共通言語となるのがイベント進行台本です。大切なのは、詳細な台本を作ることそのものではなく、「誰が・いつ・何をするのか」を関係者全員が同じ認識で共有すること。

そして、イベント直前まで発生する変更を、確実に全員へ反映することです。

**イベントプロジェクト管理ツール「MICE Joy」**では、AIを活用したイベント準備の効率化に加え、スケジュール、タスク、資料などを一元管理できます。

AIがワンクリックでイベントスケジュール(WBS)を生成し、チーム全員が同じ情報を共有しながらプロジェクトを推進。イベント直前に変更が発生しても、最新情報を一つの場所に集約することで、認識のズレを防ぎやすくなります。

AIによって「作る作業」を効率化し、人は演出や参加者体験など、イベントの価値を高める仕事に時間を使う。そんなイベント運営の形が、これからますます広がっていくでしょう。

BizMICEでは今後も、イベント担当者の皆さまが現場で活用できる知識やノウハウを、BizMICEアカデミーを通じてお届けしてまいります。

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