「前回のイベントって、どうやって進めましたか?」企業イベントの準備を始めたとき、こんな会話が交わされることは珍しくない。すると、「前回の担当者が異動してしまって……」「たしかExcelがどこかにあったはずです」「制作会社の担当者なら分かるかもしれません」という答えが返ってくる。

数百万円、場合によっては数千万円をかけて開催したイベントでも、そこで得られた経験やノウハウが組織に残っていない。これは、多くのイベント現場が抱える大きな課題である。

イベントは、なぜ属人化しやすいのか

イベントは一般的な定型業務とは少し性質が異なる。イベントごとに目的も、参加人数も、会場も、関係者も違う。

さらに準備期間中には、

  • 会場とのメール
  • 制作会社とのチャット
  • Excelの進行管理表
  • PowerPointの企画書
  • オンライン会議の議事録
  • 進行台本
  • 運営マニュアル

など、さまざまな場所で情報が生まれる。その結果、「最新情報がどこにあるのか分からない」という状態が生まれやすい。そして最終的には、担当者本人だけが全体像を把握している。これがイベント運営における属人化の正体だ。

*ファイルの最新情報が一目でわかるイベントプロジェクト管理ツール「MICE Joy」

「あの人がいないと分からない」はリスクになる

イベントでは開催日を延期できない。担当者が突然休んだとしても、イベントの準備は止められない。ところが情報が個人に集中していると、「この制作物は誰が確認するのか」「登壇者への連絡は済んでいるのか」「このタスクは誰が担当しているのか」といったことが分からなくなる。

特定の担当者への依存は、単なる業務効率の問題ではない。イベント開催そのものに関わるリスクなのである。

*「あの人がいないとわからない」リスクを回避するMICE Joy

引き継がれているのは「ファイル」であって「ノウハウ」ではない

イベント終了後、多くの企業では資料を保存している。

企画書。

WBS。

進行台本。

運営マニュアル。

アンケート結果。

写真や映像。

しかし、ファイルを保存するだけでは十分ではない。本当に次回の担当者が知りたいのは、「なぜこの会場を選んだのか」「どのタスクで遅れが発生したのか」「参加者から何が評価されたのか」「当日どんなトラブルが起きたのか」「次回は何を改善すべきなのか」といった判断の背景や経験だからだ。

完成した資料だけを保存しても、そこに至るプロセスまでは残らない。

*イベントノウハウを引き継ぐ

イベントを「プロジェクトデータ」として残す

そこで重要になるのが、イベントを単なるファイルの集合ではなく、一つのプロジェクトとして記録するという考え方だ。例えば、「2026年度 社員表彰式」というプロジェクトの中に、企画、スケジュール、タスク、担当者、会議内容、資料、変更履歴、運営マニュアル、アンケート結果などがまとまっている。

そうすれば翌年の担当者は、「去年はどんなスケジュールだったのか」「いつから会場選定を始めたのか」「どんな準備に時間がかかったのか」を確認できる。イベントを開催するたびに、組織にノウハウが蓄積されていく。

★イベントをプロジェクトデータ化して残す

毎回「ゼロから始める」をやめる

イベントの属人化を解消する最大のメリットは、次の担当者がゼロからスタートしなくて済むことだ。例えば、前年の表彰式で120個のタスクが発生したとする。翌年も同様のイベントを開催するのであれば、その120個をもう一度ゼロから考える必要はない。

前年のプロジェクトを参考にしながら、「今年はこのタスクを追加しよう」「これは不要だった」「去年遅れたので、今年は2週間早めよう」と改善すればいい。

イベントを開催するたびに、準備の精度が高まっていくこれこそ、イベントDXによって実現したい状態である。

「経験者がいる会社」から「経験が残る会社」へ

これまでイベント品質は、担当者の経験に大きく左右されてきた。経験豊富なプロデューサーなら成功する。経験の浅い担当者なら苦労する。

しかし、組織としてイベントデータとノウハウを蓄積できれば、この構造は変わる。経験の浅い担当者でも、過去のWBSを参考にする。過去の運営マニュアルを見る。過去に発生したトラブルを確認する。過去のアンケートから改善点を学ぶ。

つまり、組織の経験を借りながらイベントを運営できるようになる。重要なのは「経験豊富な人を増やす」ことだけではない。経験そのものを会社に残す仕組みをつくることなのである。

★イベント経験者がいる会社から経験が残る会社へ。」MICE Joyで実現

AI時代には「蓄積されたデータ」がさらに重要になる

そして、この考え方は第7回で取り上げたAIとも密接につながっている。AIがイベント担当者を支援するためには、学習・参照できる情報が必要だ。過去のイベントデータが蓄積されていれば、将来的には、「300人規模の表彰式では、どんなタスクが必要?」「過去に遅延しやすかった工程は?」「去年の参加者アンケートで改善要望が多かった項目は?」「過去の運営マニュアルを参考に今年版を作って」といった活用も考えられる。

つまり、イベントデータの蓄積 × AIによって、イベント運営の知識そのものを組織で活用できるようになる。

★イベント経験者がいる会社から経験が残る会社へ。」MICE Joyで実現

属人化をなくすことが、参加者体験につながる

ここまで読むと、属人化解消は主催者側の業務効率化の話に見えるかもしれない。しかし、最終的には参加者体験にも直結する。前年のトラブルが今年も繰り返される。担当者が変わるたびにイベント品質が変わる。過去のアンケート結果が次回に反映されない。

こうした状態では、参加者体験も改善されない。逆に、イベントを開催するたびにノウハウが蓄積されれば、1回目より2回目、2回目より3回目。イベントそのものを継続的に進化させることができる。

★イベント経験者がいる会社から経験が残る会社へ。」MICE Joyで実現

編集部より

イベント運営におけるDXの目的は、単にExcelを別のツールへ置き換えることではありません。本当に重要なのは、「人に蓄積されていたイベントの経験を、組織に蓄積すること」です。

担当者が変わっても、イベント品質が落ちない。過去の成功も失敗も、次の担当者が活用できる。そしてイベントを開催するたびに、組織のイベント運営力そのものが高まっていく。

これからのイベントDXでは、「情報を管理する」だけでなく、**「経験を資産化する」**という視点がますます重要になっていくでしょう。

次回、第9回では**「AIエージェントでイベント運営はどこまで自律化するのか」**をテーマに、担当者から指示を受けるAIから、状況を判断して先回りするAIへと進化するイベントDXの未来を考えます。

★イベント経験者がいる会社から経験が残る会社へ。」MICE Joyで実現

MICE Joyで実現するポイント

イベントの経験を「担当者の記憶」から「会社の資産」へ

イベント運営の属人化を防ぐためには、完成した資料だけでなく、プロジェクトの過程そのものを残すことが重要です。

MICE Joyでは、一つのイベントプロジェクトの中で、

  • WBS・スケジュール
  • タスクと担当者
  • タスクごとの進捗
  • チーム内のコミュニケーション
  • 議事録
  • イベント関連資料
  • 運営マニュアル
  • 進行台本

など、イベント準備に関する情報を一元的に管理できます。例えば翌年、同じ種類のイベントを開催するときに、前年のプロジェクトを参照すれば、「何を、いつまでに、どのように準備したのか」を確認できます。

さらにMICE Joyでは、イベントの種類や開催日などをもとにWBSをAIで生成したり、プロジェクトに蓄積された情報を活用して運営マニュアルや進行台本を生成したりすることも可能です。目指すのは、「担当者が変わっても、イベントの経験は会社に残る」という環境です。

イベントを開催するたびに情報とノウハウが蓄積され、それを次のイベントで再利用する。そして将来的には、蓄積されたイベントデータをAIが活用し、担当者をさらに先回りして支援する。MICE Joyは、単なるタスク管理ツールではなく、企業のイベント運営ノウハウを蓄積する基盤を目指しています。

★イベント運営を会社の資産にするMICE Joy