素晴らしい観光施設をつくれば、人は来てくれる。果たして、本当にそうでしょうか。

テーマパーク、リゾート、観光施設、ミュージアム。

体験してみればその魅力が分かる施設であっても、そこへ行くまでには大きな壁があります。「わざわざそこまで行く理由」が必要だからです。その課題を考えるうえで、興味深い存在が沖縄北部に誕生した**「JUNGLIA OKINAWA(ジャングリア沖縄)」**です。

ジャングリア沖縄は、やんばるから連なる大自然を舞台に、アトラクションだけでなく、沖縄ならではのエンターテインメント、地元食材を生かしたフード、スパなどを組み合わせた「大自然没入型」のテーマパークです。

では、この体験価値をさらに多くの人へ届けるために、イベントには何ができるでしょうか。今回は「ジャングリアへ人を呼ぶ」という発想から一歩広げて、「イベントによって沖縄北部へ行く理由そのものをつくる」という可能性を考えてみます。

「行けば分かる」の前に、「行く理由」が必要

体験型施設には、マーケティング上の難しさがあります。写真を見る。動画を見る。SNSを見る。広告を見る。それでも、実際にその場所へ行ったときの感動を100%伝えることはできません。

特に自然、空間、音、食、身体感覚などを組み合わせた体験は、画面越しでは伝わりにくいものです。だからこそ重要になるのが、「最初の一回来訪」をどうつくるか。

そこでイベントの出番です。施設そのものを目的に来てもらうだけではなく、別の来訪目的をつくり、その旅程の中に施設体験を組み込む。イベントを「集客装置」として考えるのです。

ジャングリアではなく、「沖縄北部」にイベントをつくる

例えば、仮にこんなイベントがあったらどうでしょう。

OKINAWA NORTH FESTIVAL

ジャングリアだけで開催するフェスティバルではありません。沖縄北部そのものを舞台にした、3日間の大型イベントです。名護、本部、今帰仁などの周辺地域を巻き込み、地域の食、音楽、自然体験、伝統文化、スポーツ、アート、ビジネスカンファレンス、ナイトイベントなどを同時展開します。

ホテル、飲食店、観光施設、交通事業者、自治体、地元企業も参加します。すると参加目的は、「ジャングリアへ行く」だけではなく、「沖縄北部でしか体験できない3日間へ行く」へ変わります。

イベント参加者が、自然にジャングリアを体験する

ここで重要なのは、イベントの中心をすべてジャングリアにしないことです。むしろ沖縄北部を回遊するプログラムの一つとして、ジャングリア体験を組み込みます。

例えば、

DAY1:那覇到着 → 沖縄北部へ → 地域フードフェス → ナイトイベント

DAY2:ビジネスカンファレンス/地域体験 → ジャングリア → 限定ナイトプログラム

DAY3:ビーチ・自然体験 → 地域観光 → 那覇へ

という旅程です。イベント参加チケットとジャングリアの入場をセットにする。参加者限定プログラムを用意する。イベント参加者専用の時間帯を設ける。こうした設計ができれば、「イベントに参加した結果、ジャングリアを初めて体験した」という人を増やすことができます。

イベントを「送客メディア」として考える

ここでイベントの役割を少し変えて考えてみましょう。イベントは通常、「人を集める場所」として考えられています。

しかしイベントには、もう一つ大きな力があります。人を動かす力です。イベントがあれば、人は移動します。飛行機に乗る。ホテルに泊まる。タクシーやバスを使う。飲食店へ行く。観光施設を訪れる。買い物をする。

つまりイベントは、「地域へ人を送り込むメディア」にもなり得ます。広告では情報を届けます。イベントは、人そのものを動かします。ここに、観光マーケティングとイベントの大きな接点があります。

「ジャングリアに来てください」から発想を変える

施設側から考えると、どうしても、「ジャングリアへ来てください」というマーケティングになります。しかし消費者側から考えると、

「沖縄へ行く」

「北部へ行く」

「友人とフェスへ行く」

「会社の研修で行く」

「カンファレンスに参加する」

など、旅行の目的はさまざまです。そこで、ジャングリアを旅の目的にするだけでなく、旅の中にジャングリアを入れる。という発想が生まれます。

これはテーマパークだけでなく、地方の観光施設やMICE施設にも応用できる考え方です。

BtoCイベントだけでなく、MICEも使える

この考え方は音楽フェスなどのBtoCイベントに限りません。企業イベントにも応用できます。例えば、

経営者カンファレンス。

スタートアップイベント。

社員研修。

インセンティブトラベル。

企業の表彰旅行。

新規事業合宿。

こうしたイベントを沖縄北部で開催し、そのプログラムの一部にジャングリアを組み込むこともできます。

昼間はカンファレンス。

午後からジャングリア。

夜はホテルでネットワーキング。

翌日はチームビルディングとして自然体験。

こうすると、MICE × テーマパーク × 観光という新しいデスティネーション体験が生まれます。

ジャングリア単独ではなく「地域連合」でつくる

このモデルを成立させるうえで重要なのが、地域との連携です。ジャングリアだけでイベントをつくるのではありません。

ホテル。

飲食店。

レンタカー会社。

バス・タクシー。

観光施設。

農業・漁業などの生産者。

地域のアーティスト。

自治体。

DMO。

こうしたプレイヤーを巻き込みます。すると、

イベント参加者が増える

ホテルに宿泊する

飲食店を利用する

観光施設へ行く

ジャングリアを体験する

地域消費が増える

という循環が生まれます。重要なのは、イベントの成功と地域の成功を同じ方向に向けることです。

「初回来場」で終わらせない

そして、本当に重要なのはここからです。イベントをきっかけに初めて施設を体験してもらえたとしても、それだけでは一時的な集客です。その後、

SNSへ投稿する。

家族や友人に話す。

別の季節にもう一度訪れる。

今度は家族を連れてくる。

別のアトラクションを体験する。

という行動につながれば、イベントによる集客は長期的な価値へ変わります。

つまり、

イベント

初回来訪

体験

SNS・口コミ

再訪

新しい来訪者

という循環です。イベントのKPIも、単なる「イベント来場者数」だけではなく、

ジャングリア体験率、

地域回遊率、

宿泊率、

SNS投稿数、

再訪意向、

再来訪率

などまで追うことができれば、イベントの本当の経済効果が見えてきます。

実はジャングリア自身も「パークの外」を意識している

ジャングリア沖縄の現在の公式サイトを見ると、アトラクションだけではなく、大自然、沖縄エンターテインメント、南国グルメ、絶景スパなどを一体として訴求しています。さらにオフィシャルホテル、航空券、チケットを組み合わせた旅行商品への導線も用意されています。

つまりジャングリアという施設単体ではなく、「沖縄旅行全体の中でジャングリアをどう体験してもらうか」という方向へすでに広がりつつあります。ここに地域イベントというレイヤーが加われば、

「沖縄へ行く」
から
「沖縄北部へ行く」
そして
「ジャングリアも体験する」という新しい来訪動機をつくれる可能性があります。

イベントは「人を集めるもの」から「人を動かすもの」へ

前回の「世界のイベントから学ぶ」では、ドイツ・ミュンヘンのOktoberfestを取り上げました。Oktoberfestの大きな価値は、イベント自体が、「ミュンヘンへ行く理由」になっていることです。

世界中から人が訪れ、泊まり、食べ、飲み、街を歩き、地域を体験する。イベントがデスティネーションをつくっています。この考え方を日本の地域へ応用する余地は、まだ大きいのではないでしょうか。

編集部からの考察

これまでイベント業界では、「どうやってイベント会場へ人を集めるか」を考えてきました。しかし、これからは逆の発想が必要なのかもしれません。イベントを使って、どこへ人を動かすか。

テーマパークへ。

ホテルへ。

観光地へ。

飲食店へ。

地域へ。

イベントを起点に人の流れをデザインする。そう考えると、イベントの価値は会場の中だけではなくなります。

ジャングリア沖縄のように、その場所へ行って初めて分かる体験価値を持つ施設にとって、イベントは「体験してもらう最初のきっかけ」になり得ます。そして、そのイベントを施設の中だけで完結させず、地域全体へ広げていく。

「ジャングリアへ人を呼ぶ」のではなく、「沖縄北部へ行く理由をつくる」。その結果としてジャングリアを体験する人が増え、地域を訪れる人も増える。イベントには、そんな新しい役割があるのではないでしょうか。

※本記事は公開情報をもとに、イベント・MICEの観点から編集部が独自に考察したものです。JUNGLIA OKINAWAおよび運営会社とのタイアップ・提携記事ではありません。