顧客向けセミナーや交流会を開くと、参加者数やアンケートの満足度が成果として報告されます。会場が満席になり、参加者から好意的な感想が寄せられれば、担当者にとってもうれしい結果です。

一方、経営層や営業部門からは「その後、商談や売上につながったのか」と問われることもあります。顧客イベントを事業の成果につなげるには、開催前から参加者に次にどのような行動を取ってほしいかを決めておく必要があります。

「参加してほしい人」を目的から決める

参加者を増やすことだけを目標にすると、関心の薄い人まで広く集客し、開催後の接点をつくりにくくなることがあります。

例えば、新規顧客にサービスを知ってもらいたいのか。すでに関心のある顧客に、導入を具体的に検討してほしいのか。既存顧客に、活用の幅を広げてほしいのか。目的によって、招くべき人も提供すべき内容も変わります。

開催目的主な対象参加後に期待する行動
認知を広げる課題に関心を持ち始めた人関連記事や資料を読む
検討を進める解決策を比較している人事例を確認し、個別相談を申し込む
関係を深める既存顧客新たな活用方法を試す、担当者に相談する

まず「誰の、どの段階の意思決定を支えるイベントか」を明確にすると、企画の軸が定まります。

売り込みより、判断に役立つ体験をつくる

顧客イベントだからといって、登壇時間の大半を商品説明に充てる必要はありません。参加者が知りたいのは、自分たちの課題をどう捉え、どのような選択肢があるかです。

例えば、課題を整理する講演、実際に取り組んだ企業の話、担当者同士で悩みを共有できる場は、参加者の判断を助けます。商品やサービスを紹介する場合も、どの課題に、どう役立つのかを具体的に示すことが大切です。

会場で質問しやすい雰囲気をつくることも、顧客理解につながります。登壇中に聞きにくい質問を個別に相談できる時間を設ければ、参加者の関心や懸念を、主催者側も把握できます。

次の接点を、参加者が選べるようにする

イベントで関心が高まっても、終了後の案内がなければ、そのまま途切れてしまいます。一方、参加者全員に同じ営業連絡を送っても、求めている情報と合わない場合があります。

そこで、関心の度合いに応じて、次の接点を用意します。まず情報を集めたい人には講演資料や関連記事を案内する。具体的な検討を始めたい人には事例や比較資料を届ける。相談したい人には、担当者と話せる機会を設ける。

申込時や終了後のアンケートで、関心のあるテーマや希望する案内を尋ねておくと、参加者に合ったフォローをしやすくなります。営業部門とも開催前に、誰が、いつ、どのように対応するかを決めておきましょう。

成果は、段階を分けて見る

顧客イベントから売上が生まれるまでには、時間がかかることがあります。開催直後の受注だけを見ると、イベントが果たした役割を捉えきれません。

成果は、次のように段階を分けて確認できます。

  • 集客:狙った対象に参加してもらえたか
  • 関心:参加者がどのテーマに関心を示したか
  • 次の行動:資料閲覧、個別相談、デモ申込などにつながったか
  • 商談:参加企業との商談が始まったか、既存商談が前進したか
  • 事業成果:受注や継続利用、追加利用につながったか

指標を増やしすぎると、振り返りが複雑になります。開催目的に合わせて、特に重要な指標を数点選ぶとよいでしょう。参加者数だけでなく、狙った顧客が参加し、次の行動につながったかを見ることがポイントです。

イベントだけの売上として数えない

顧客が契約を決めるまでには、広告、記事、営業担当者との対話、サービスの評価など、複数の接点があります。イベント参加後に受注した案件を、すべてイベント単独の成果とするのは適切ではありません。

その代わり、イベントがどの場面で役立ったかを記録します。初めて自社を知るきっかけになったのか。導入への不安を解消したのか。担当者が社内で提案する材料になったのか。営業担当者への聞き取りも交えれば、数字だけでは見えない貢献が分かります。

顧客イベントを、関係が深まる接点にする

顧客イベントの価値は、一日で売上を生むことだけではありません。顧客の課題を知り、判断に役立つ情報を届け、次の対話を始められることにあります。

企画の際は、「何人集めるか」とともに、次の三つを決めてみてください。

  1. 誰の、どのような課題に応えるか
  2. 参加後に、どのような行動を取りやすくするか
  3. その変化を、どの指標と顧客の声で確かめるか

この三つがつながれば、講演内容も交流の設計も、開催後のフォローも決めやすくなります。顧客イベントを売上につなげる第一歩は、参加者との関係を開催後まで設計することです。

次回は「新商品発表会は、市場の認識を変えられるか」をテーマに、発表の場で新しい価値をどう伝えるかを考えます。