世界中が熱狂するFIFAワールドカップ。今大会は、カナダ・メキシコ・米国の3カ国、16都市で開催され、参加国は48カ国、試合数は104試合に拡大した。このワールドカップの楽しみ方は、スタジアムで試合を見ることだけではない。
近年の大型スポーツイベントでは、チケットを持たない人も街中でイベントに参加できる「ファンゾーン」や「ファンフェスティバル」が重要な役割を果たしている。今大会でも、FIFA Fan Festivalをはじめ、各開催都市でパブリックビューイング、音楽、飲食、地域文化、エンターテインメントを組み合わせた体験が展開されている。
これは、企業イベントにとっても大きなヒントになる。
イベントの価値は「本編」だけではなくなった
従来のイベントは、メインコンテンツが中心だった。セミナーなら講演、表彰式なら授賞式、展示会ならブース商談が主役だった。しかし、今のイベントでは、本編以外の体験価値が重要になっている。
ワールドカップでいえば、試合そのものはもちろん重要だ。しかし、試合前後の街の盛り上がり、ファン同士の交流、音楽、グルメ、写真を撮りたくなる空間、SNSで共有したくなる演出も、イベント価値の一部になっている。
企業イベントでも同じだ。講演だけでなく、受付、待機時間、展示、交流、フォトスポット、参加者同士の接点、終了後の余韻まで含めて設計することで、イベントの満足度は大きく変わる。
「参加できない人」をどう巻き込むか
ファンゾーンの特徴は、スタジアムに入れない人にも参加機会を提供している点にある。
これは企業イベントでも重要な考え方だ。会場に来られない社員、取引先、地方拠点、オンライン参加者、後日視聴者。こうした人たちをどう巻き込むかによって、イベントの影響範囲は大きく変わる。
たとえば、社内表彰式であれば、会場参加者だけでなく、オンライン視聴者にも一体感を持たせる演出ができる。周年イベントであれば、当日参加できない顧客に向けて、ダイジェスト動画や限定コンテンツを届けることもできる。イベントは、会場にいる人だけのものではなくなっているのだ。
ファンゾーンは「交流」を生む装置である
ファンゾーンの価値は、試合を大画面で見ることだけではない。そこに集まった人同士が同じ時間を共有し、感情を共有し、自然に交流することに価値がある。
企業イベントでも、参加者同士の交流は重要だ。展示会、カンファレンス、顧客向けイベント、社内イベントのいずれにおいても、主催者が一方的に情報を届けるだけでは、参加者の記憶には残りにくい。参加者が誰かと話す。写真を撮る。体験する。投稿する。感想を共有する。
こうした行動が生まれる設計こそ、イベントの価値を高める。
「街全体を会場にする」発想
ワールドカップのファンゾーンは、スタジアム外にイベント空間を広げる取り組みでもある。開催都市全体が大会の舞台となり、観光、飲食、交通、宿泊、地域文化と結びついていく。
これはMICEにおいて非常に重要な視点だ。企業イベントでも、会場内だけで完結させるのではなく、周辺施設や地域体験と組み合わせることで、参加者体験を拡張できる。
たとえば、カンファレンス後のネットワーキング、地域の飲食店との連携、宿泊施設とのパッケージ、街歩き企画、サテライト会場などが考えられる。イベントは、会場単体ではなく、都市や地域と連動することで価値を高められる。
ファンゾーン型発想は企業イベントにも応用できる
企業イベントにおけるファンゾーン型発想とは、メインプログラムの外側に「参加者が自由に楽しめる余白」をつくることだ。
たとえば、次のような施策が考えられる。
・開場前に楽しめる展示・体験ブース
・登壇者や受賞者と写真を撮れるフォトスポット
・参加者同士が交流できるラウンジ
・スポンサー企業の体験コンテンツ
・オンライン参加者向けの限定配信
・イベント後に共有できるダイジェストコンテンツ
重要なのは、主催者が伝えたい情報だけでなく、参加者が「自分ごと化」できる体験を用意することだ。
まとめ
イベントは、もはや本編だけで完結しない。会場の外、参加前、参加後、オンライン、地域、SNSまで含めて、一つの体験として設計される時代になっている。
企業イベントでも、参加者に「来てよかった」「誰かに話したい」「また参加したい」と思ってもらうには、メインコンテンツだけでなく、その周辺にある体験価値を設計することが欠かせない。
チケットがなくても参加できるワールドカップのファンゾーンは、企業イベント担当者にとって、これからのイベント体験を考えるうえで大きなヒントになる。
BizMICE編集部より
ワールドカップのような世界規模のイベントも、企業の表彰式やカンファレンスも、本質は「人・情報・体験をデザインする」という点で共通しています。今後もBizMICEでは、スポーツやエンターテインメントの事例から、企業イベントやMICE業界に活かせるヒントを発信していきます。







